欧州

2024.04.27 10:00

増殖するロシア軍の「亀戦車」、現時点では有能かも 東部の突破口でも出番うかがう

安井克至

撃破されたロシア軍のT-72戦車。2022年4月、ウクライナの首都キーウ郊外で(kibri_ho / Shutterstock.com)

4月上旬、ウクライナ東部ドネツク市のすぐ西にある小さな町、クラスノホリウカ郊外の戦場を空から監視していたウクライナ軍のドローン(無人機)操縦士は、車体と砲塔を小屋のような大きな装甲で覆ったロシア軍のT-72戦車らしき車両が地を這っているのを見つけて、驚愕した。

亀のような格好をしたこの奇妙な戦車は、さらに驚くべきことに1両きりではなかった。ロシア軍の戦車兵らの間でこのタイプの即席の装甲は効果があるとの考えが広まったらしく、似たような「亀戦車」が続々と登場した

問題は、その大きな追加装甲はウクライナ軍が使うある特定の弾薬にしか効果がないとみられる点だ。そしてウクライナ軍はいままさに、このDIY装甲ではおそらく防護できない弾薬を補充しようとしている。

1両目の亀戦車の3人の乗員たちが、51tの戦車にその不格好な装甲をかぶせた理由は明らかだった。ウクライナ軍が連日、爆弾を取り付けて何千機と飛ばしているFPV(一人称視点)ドローンに対する「盾」にするためだ。

同じくすぐわかったのは、亀戦車はひと目見て、いくつか重大な欠陥を抱えていそうなことだった。甲羅を支える支柱は砲塔の回転を妨げるだろう。かさばる甲羅のせいで視界と機動性も損なわれそうだ。おまけに、甲羅と本体の間には、熟練の操縦士ならドローンを潜り込ませられそうな隙間がある。

観察者たちはこの不格好な戦車を見て笑った。1両目がクラスノホリウカのウクライナ側陣地を攻撃したデビュー戦を生き延びたあと、帰還したドネツク市の基地で砲撃を受けて粉砕されたらしいことが伝わると、大笑いした。

だが、亀戦車たちはその後ものこのこやって来た。いまでは、ロシアがウクライナで拡大して26カ月あまりたつ戦争の東部戦線で、もはや珍しくない存在になっている。

甲羅にドローン対策のジャマー(電波妨害装置)をはり付け、車体前方に地雷除去ローラーも生やすことの多い亀戦車たちは、クラスノホリウカに対する攻撃を何度か先導した。これまでに、少なくとも1両が損傷して走行不能になり、ロシア側が車両で牽引して回収している。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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